中山聖子先生のページ


中山聖子先生は、主婦業のかたわら執筆を始め、その後、数々の文学賞を受賞されてきた実力派の児童文学作家です。

現代の子どもたちを取り巻く複雑な状況を、現実感のある確かな筆致で描きながら、子どもから見た世界を見事に表現した作品を数多く発表されています。

また、多様な人生のありようを受け入れながら、それぞれの登場人物の未来に希望を見出していく手法は、人間への限りない愛情と理解に満ち、多くの読者をひきつけています。

これは、海外生活もされてきた先生の経験の豊富さと、二児の母という女性としての洞察力が作品に力をあたえているためと言ってもいいでしょう。

短期間のうちに次々と著書を残されていますが、間断なく傑作を生み出すその創作能力は、他の追随を許さないものがあります。


プロフィール

中山聖子

1967年生まれ。

2004年「夏への帰り道」で第13回小川未明文学賞。

2005年「心音」で第15回ゆきのまち幻想文学賞。

2007年「チョコミント」で第24回さきがけ文学賞。

2008年「コスモス」で第1回角川学芸児童文学賞。

日本児童文学者協会会員。

日本児童文芸家協会会員。

山口県在住。 


中山先生のツイッターは、こちらからご覧いただけます。


出版物

雷のあとに 文研出版

小学五年生の睦子は、お父さんとお母さん、それに、私立中学に通い、勉強もスポーツもできるお兄ちゃんと暮らしている。

「お母さんに似てスラリとした体形で、きれいな二重の目をした」お兄ちゃんは、小さなころから、どこへ行っても褒められるが、丸顔で容姿に自信が持てない睦子は、自分にコンプレックスを抱いてしまっている。

睦子は、自分の名前にも、いい感情を持っていない。

お兄ちゃんは、貴良と書いて「たから」と読む素敵な名前を付けてもらっているのに。

お母さんに、なぜ、自分だけ睦子というありふれた名前にしたのか尋ねてみると、「兄妹、仲睦まじくと思ってね」という、まるで、お兄ちゃんのためにつけたような、軽々しい名前であることがわかってしまった。

「お兄ちゃんは、名前のとおりこの家の宝物なのだろう」

いつしか、睦子は、近所でひとり暮らしをしているお母さんのお兄さん、ハルおじさんの家にばかり出入りするようになる。

自分の家で「面倒くさい」お母さんといるよりも、建築士の仕事をして、いつも家の模型にかこまれているハルおじさんのそばにいる時の方が、ずっと気持ちが落ち着くからだ。

けれども、子供のころから体の弱かったハルおじさんは、ある日、突然のようにこの世から去ってしまった。

仕事で使っていた、たくさんの住宅模型だけを残して。

娘に対して一方的と思える母親や、クラスメイトたちとの関係に傷つき戸惑いながら、しだいに孤立感を深めていく少女の心情が、とうとうと流れる川のような澄んだ文体で語られていきます。

また、母親の側から見た家族の姿も行間からにじみ出ていて、育児にはげむ女性にとっても、読み応えのある内容となっています。

やがて、「睦子」という名前に込められた本当の意味が明かされていきますが、そこに、「死」というものを見据えた作者の家族への思いが重なり、物語に重厚感を与えています。

小学校高学年から中学生以上向き。

「雷のあとに」という題名が、読み終わった後に余韻となって胸に響く、新時代の幕開けにふさわしい名作です。


きっと、物語はよりそう 偕成社

日本児童文学者協会編、六人の作家によるアンソロジー。

中山先生の作品は、「瀬尾くんと歩く」。

小学五年生の「モッチ」こと、持田真一のクラスに、日帰りの社会見学の話が持ち上がる。

当日は、五人ずつの班を作り集団行動するよう担任の先生から言われて、モッチは、さっそく、となりの席の佳樹たちと班を組むことになるが、そこに「オレも入っていい?」と声をかけてきたのは、足に障害を持つ瀬尾くんだった。

なんとなく、困ったような雰囲気になるモッチたち。

いよいよ、社外見学の日がやってきたが、人なみに歩けないくせに、メモばかり取っている記録係の瀬尾くんは、なかなか、みんなのスピードに追いつけない。

そんな瀬尾くんにイラつき、また、瀬尾くんを振り返ろうともしない佳樹たちにも腹を立てるモッチだったが。

母親の手術という心配事を、ひとりで胸に抱えながら、モヤモヤした気持ちを整理できずにいるモッチに、瀬尾くんが、さり気ないやさしさで寄り添います。

精一杯の勇気をかくしてがんばる瀬尾くんの姿が、心を温めてくれるさわやかな短編ストーリー。


その景色をさがして PHP研究所

父と母が離婚をし、その上、いっしょに暮らしていた母親を病気で亡くした主人公のトーコ。

中学二年生の彼女は、母方の祖父母の家に引き取られ平凡な中学校生活を送っている。

けっして、何もかもわかりあえる理想的な母娘ではなかったが、それでも、トーコの心はすべての家庭の幸福を失ってしまった苦しみにあえいでいる。

母親は、生前、トーコに見せたい景色があると語っていた。

それがどんな場所で、そこにどんな秘密が隠されているのか、母親がいなくなった今となっては、だれにもわからなかったが、ふとしたきっかけから、トーコは、謎を解く鍵を発見する。

トーコは、自分が何のとりえもないつまらない人間だと思っている。

小説家だった母親や小児科医の叔母とちがって、自分は何をやってもまん中くらいだと考えている。

そして、父と母の離婚によって、自分がこの世に生まれてきてはいけなかった失敗の産物なのだと信じている。

そんなトーコに、母親はどんな景色を見せたかったのだろう?

すでに再婚をし、離れ離れになっている父親からの電話。

それをめぐって言い争いになる祖父母の姿に、トーコの苦しみは募っていく。

友人との関係に悩んだり、気になる男子に切ない思いを抱いたり、14歳の少女の複雑な内面が、文学性香る豊かな筆致でみずみずしく描かれる。

「その景色をさがして」

作品の題名は、トーコの心のさけびそのものである。

やがて、その景色のある場所をつきとめ初めてのひとり旅に出るトーコ。

はたして、彼女の行く先に待っているものは何なのか?

それは、彼女に何を見せ何を語ってくれるのだろうか?

幻想的なラストにさわやかな読後感が残る、魂の再生と希望の物語。

圧倒的な感動が、読む者の心を揺さぶります。


さよなら、ぼくらの千代商店 岩崎書店

「一 あの日のスキップ 倉沢英太」「二 夢のある子が育つ家 水沢嬉々」「三 うさき小屋の友だち 羽沢美織」「四 つながるハナウタ 早川翔也」の四編からなるオムニバス作品。

中学受験を控えて父親との関係に悩む倉沢英太、母子家庭の母親とうまくいかない水沢嬉々、友だちができず孤独な世界に入っていく羽沢美織、そして、母親の病気のことで心が落ち着かない早川翔也と、それぞれ悩みを抱えた主人公たちが、不思議な水色のバスに乗って千代商店へとたどり着きます。

千代商店とは、主人公たちが幼いころに通っていた千代ばあちゃんのお店のこと。

日用品や駄菓子のならぶ店内には、丸いテーブルとイスが置かれてあって、だれでも、一休みすることができるようになっています。

その店先には、かわいらしい男の子のようなお地蔵さんが立っているのですが・・・。

「ここではないどこかへ行きたい」と願う主人公たち。

そんな彼らを、やさしい奇跡が包み込みます。

受験戦争やいじめの問題。

社会に潜む差別と不公平。

現代の子どもたちを取り巻く社会的課題をしっかりと見すえながら、本当の自分らしさ、本当の人間らしさを子供たちの中に見出していく作者の温かいまなざしが、深い感動を呼び起こします。

水色のバスはどこからやってくるのか?なぜ、千代商店にたどり着くのか?

毎日小学生新聞に連載され好評を博した、ミステリアスな珠玉の短編作品集。


べんり屋、寺岡の春。 文研出版

「べんり屋、寺岡の夏。」から続いてきた人気シリーズ最終巻。

べんり屋寺岡で働くカズ君の受験日が、間近に迫ってきた。

家族ぐるみで応援している寺岡一家だが、そわそわとして、なんとなく落ち着かない。

そんな時、主人公の美舟がひそかに気にしているクラスメイトの男の子、筒井君がお父さんといっしょに寺岡家にやってくる。

依頼は、筒井君が理科室で飼っているカメの池を、自宅の庭に作ってほしいというもの。

筒井君には、凪人君という病気で入院している弟がいるが、その凪人君が一時帰宅するのにあわせて、池に放したカメを見せてあげたいと筒井君は考えていた。

いつもニコニコして、他のクラスメイトの男の子たちとは、どこかちがう雰囲気のある筒井君。

でも、筒井君がカメ好きになったのには、美舟もびっくりする思いがけない理由があった・・・。

これまでの作品同様、寺岡家とそれを取り巻く人々が織り成すユーモアに満ちた会話や行動は、今回も健在。

笑いながら、けれども、途中何度も涙したくなる「べんり屋」シリーズも、今作がラストとなります。

やがて寺岡家から旅立っていくカズ君や、亜衣ちゃんのおばあちゃんとの悲しい別れ。

そんな中で美舟が、何を思いどう成長していくのかが、緻密なタッチで丁寧に描かれています。


べんり屋、寺岡の冬。 文研出版

「べんり屋、寺岡の夏。」「べんり屋、寺岡の秋。」に続く「べんり屋」シリーズ第三弾。

人気作品の最新刊がついに登場です。

お母さんが、お父さんとケンカして家を飛び出してしまった!

とつぜん、寺岡家に持ち上がった「べんり屋」の危機。

でも、不安になって相談した友だちの真帆は、なんだか美舟に冷たい態度をとったりする。

わけがわからない美舟。

クリスマスプレゼントにトイプードルがほしかった美舟は、お客さんから預かった雑種犬「ハナゾウ」をしかたなく世話しながら、なんだか落ち着かない。

ところが、お母さんが帰ってこないまま迎えた終業式の日、真帆が離婚して離れて暮らしているお父さんに会いに行くと言い出す。

「そんなことして、だいじょうぶ?」と心配する美舟だが・・・。

美舟のまわりには、いつもさわぎを巻きおこす人がいっぱい。

でも、そんな人たちと泣いたり怒ったり笑ったりしながら、美舟は、わかっているつもりでいた身近な人たちの本当の心に気づいていきます。

べんり屋に依頼にくるお客さんたちのエピソードが、物語に味わいを持たせ、読者に深く語りかけてくる構成が、作品に生命を吹き込み、高い完成度をもたらせています。

児童文学ですが、大人が読んでも納得のハイクオリティな一書です。

後半に登場する「そう君」のかわいらしさも秀逸です。


べんり屋、寺岡の秋。 文研出版

「べんり屋、寺岡の夏。」の続編。

さえない画家の父親を反面教師に「まっとうに生きる」ことを目標にしている小学5年生の美舟の新たな物語。

ある日、娘の保育園の運動会に家族として参加してほしいという依頼が、べんり屋寺岡に舞いこんでくる。

母親の里砂さんは、立ち上げたばかりの洋菓子店が忙しくて、運動会に参加できないらしい。

とはいえ、娘のすみれちゃんは、まだ四歳。

知らない人ばかりに囲まれた運動会では、さぞ、心細いにちがいない。

とにかく、かわいいすみれちゃんのために一肌脱ごうと決意する美舟たちだったが、運動会当日の朝、おばあちゃんと従業員のカズ君の姿が、とつぜん消えてしまって・・・。

中盤からは、寺岡家に幽霊騒動も持ち上がって、美舟たちは、インチキくさい霊能者「麗子さま」や、それを信じる「瀬戸の湯のおばさん」にふりまわされていきます。

真実を見きわめる目を持つことが、いかにむずかしいか。

人に流されるのではなく、自分の意思で生きていくことの大切さをさり気なく教えてくれる本作のラストには、子どもだけでなく大人にも共感できる説得力があります。

それでいながら、どこか間の抜けたようなユーモアが、よりいっそう作品を魅力的なものにしています。

小学校中学年以上向き。


べんり屋、寺岡の夏。 文研出版

小学5年生の寺岡美舟の将来の夢は、「まっとうに生きる」こと。

およそ小学生らしくない夢だが、彼女には、そう考えてしまうだけの理由があった。

家を不在にしている画家志望の父親に対して、複雑な感情を持つ美舟。

彼女の家では、頼りにならない父親のかわりに母親が中心となってべんり屋を営んでいる。

依頼される内容は様々だが、なんとか、依頼主の要望にこたえようとする美舟たち。

物語は、そんな美舟たちのひと夏をユーモアを交えて丹念に描いている。

個性的な人物が次々と登場し騒動をまきおこすが、けっして、現実感を見失わないところが、中山文学のすばらしいところ。

「夢がかなって、自分の思い通りになるっていう幸せもあるけど、思いもよらない形でやってくる幸せも、あるものなのよ。」

お母さんが美舟に言った言葉が、読み終わった後にしみじみと心に伝わってきて、深い感動で読者を包みこんでくれます。

おもしろくて、おかしくて、それなのに、何度も泣きたくなってしまう中山文学の最高傑作です。


迷宮ヶ丘八丁目 風を一ダース 偕成社

日本児童文学者協会に所属する、5人の作家によるアンソロジー。

中山先生の作品は、第一話「椿の記憶」。

二月のある日、中学生の唯は、家族とともに、痴呆症になってしまったおばあちゃんに会いに出かける。

幼いころ、唯のことをとてもかわいがってくれた、大好きなおばあちゃん。

そんなおばあちゃんの変わり果てた姿に、少なからずショックをおぼえる唯だったが・・・。

唯とおばあちゃんが織りなす、不思議で幸せなファンタジー。

時間を飛び越えた命の交流に、心が温まる良質な短編作品です。


ふわふわ 白鳥たちの消えた冬 福音館書店

小学5年生の香枝の住む町には、白鳥たちのいる湖がある。

もともと、オーストラリアやオランダから連れてこられたものを町の人たちが丹精に飼育し、今では、中国やロシアにまでもらわれていくほどの数になっている。

香枝をはじめ、友達の有紗やそのお母さん、もちろん、獣医をしている香枝のお父さんやお母さんなど、みんな、白鳥が大好きだ。

ところが、ある日、一羽の白鳥が死んでいるのが発見される。

鳥インフルエンザだった。

近くの養鶏場や人間への感染まで心配される中、とうとう、白鳥たちの殺処分が決定されてしまう。

町のだれにとっても、あまりにも重い決断。

このことをきっかけに、香枝と彼女を取り巻く人々との間に目に見えない亀裂が生じはじめる・・・。

物語は、著者の住む町で実際におこった2011年の事件をもとに書かれている。

殺処分の状況など、当時の様子そのままに描かれているため、たいへんリアリティがあり、胸がしめつけられる。

しかし、この作品は、そうした暗く悲しい事実の描写だけに終わらない、人間と自然の再生と希望のドラマである。

「帰ってきたんだ」

「うん、帰ってきたんだ」

白鳥たちがいなくなった湖に、カモが泳いでいるのを見た香枝と有紗。

春の訪れとともに、成長した彼女たちを描いたラストに、著者の生命の営みに対するやさしい視線が感じられます。


春の海、スナメリの浜 佼成出版社

もうすぐ四年生になる由良。

由良は、なかよしだった理子ちゃんやノンちゃんと、ちょっとしたことで気まずくなってしまいます。

そんな由良が、春休みをおばあちゃんの家ですごすことになりました。

おばあちゃんの家には、DVDもゲームもありませんが、窓からはスナメリの泳ぐ海が見渡せます。

ある日、由良は、スナメリの観察を続けている大崎さんという女性に出会います。

はじめは、スナメリのことなど興味のなかった由良でしたが、水族館でスナメリを間近に見た時から、しだいに心を動かされていきます。

なかなか笑うことのできなかった少女の心の変化が、みずみずしく描かれた心温まる物語。

さわやかな読後感が印象的な名作です。


迷宮ヶ丘一丁目 窓辺の少年 偕成社

日本児童文学者協会に所属する、5人の作家によるアンソロジー。

中山先生の作品は、第二話「冬のさなぎ」。

中学一年生の「ぼくとシン」は、同級生たちから「虫オタ」と呼ばれてからかわれている。

「虫オタ」とは「昆虫オタク」の略で、二人はそう呼ばれてもしかたないほどの昆虫好きだ。

ある冬の日、二人は、家への帰り道でなぜか道に迷ってしまう。

林から抜け出た先に広がっていたのは、見たこともない雪原。

そこに一匹の蝶が現れて・・・。

家庭に問題を抱えた少年の、ミステリアスな物語。


ツチノコ温泉へようこそ 福音館書店

ある日、ツチノコらしきものを見つけた小学5年生の周一、恭介、凛太郎。

山間のさびれた小さな町は、これを観光に利用しようと上へ下への大騒動になります。

周一たちも、地元の新聞からの取材やTVの出演依頼まで受けてちょっとした有名人に。

けれども、周一の家に来た新しい父親の誠司さんは、そんな子どもたちの様子を心配そうにながめています。

母親と結婚するまでは好きだったはずの、誠司さん対する複雑な感情。

周一や恭介とは別の中学を受験するという、凛太郎との微妙な心のすれちがい。

クラスメイトの活発な少女、小雪への、初恋と言うには幼すぎる思いなど、思春期を迎えつつある少年の繊細な心の動きが、落ち着いた筆致で描かれ、読者をグングン物語の世界へ引っぱります。

やがて、誠司さんの予感が当たり、周一たちは、思いもよらない状況に追いこまれていくのですが、そんな最中に経験したこともないような嵐がやってきて・・・。

小さな田舎町におこったツチノコ騒動を通して、子どもたちの成長と自立のひと夏を鮮やかに描いた中山文学の真骨頂。

巻末には、楽しい「ツチノコ音頭」の楽譜や振り付けが、イラスト付きで掲載してあります。


奇跡の犬コスモスにありがとう 角川学芸出版

主人公の千紗は、お父さんとお母さん、それに、言葉の障害で学校へ通えなくなってしまった弟の理久と暮らしている。

ある日、千紗たちは、たくさんの犬たちが、川原のコスモス畑に捨てられているのを見つける。

その中に混じって毛布の中でふるえていた、まっ白で弱々しい子犬。

子犬を引き取った千紗たちは、コスモスと名付けて育て始めるが、コスモスは、アルビノという障害のために、まったく耳が聞こえなかった。

今にも死んでしまいそうな弱々しい1匹の子犬とのふれあいが、しだいに理久を変え、家族を変え、そして、千紗を変えていく。

命の尊さと生きることの意味を深く問いかけながら、物語は、感動の結末へと進んでいきます。

第1回角川学芸児童文学賞受賞作品「コスモス」を改題。

日本動物愛護協会推薦図書。


チョコミント 学研

ある日、鮎子の母親が犬のコマルとともに、家から姿を消した。

いったい、なぜ?

はじめは、すぐに戻ってくると思っていた母親は、一月が過ぎても、二月が過ぎても帰ってくる気配はない。

そんな母親に怒りをおぼえながら、鮎子は、残された父親や弟の遙斗とともに、毎日の生活に悪戦苦闘する。

やがて、鮎子は、すべてのなぞを解くため、尾道にいるという母親に会いに出かけるのだが・・・。

尾道で知った、母親の過去の悲しみ。

たくましく、力強く成長していく鮎子の姿が、読者の心をゆさぶります。

第24回さきがけ文学賞受賞作品。


三人だけの山村留学 学研

小学五年生の圭は、両親の仕事の都合から、夏休みの間、わらび村への山村留学に無理やり行かされてしまう。

山村留学の募集人数は10人だったはずなのに、集まったのは、圭を含めてたったの3人だけ。

太っちょを気にしている友一と、何もしゃべらず、うつむいてばかりいる有里。

しかも、行った先は都会とは何もかもがちがう、さみしい田舎で、圭は、たちまちホームシックになってしまう。

心細くて、もう少しで泣き出しそうな圭だったが、お世話になる春見家の子供、同級生の晃と妹の奈々は、圭がやってくるのを、とても楽しみにしていたという。

そんな、村の人々の支えもあって、徐々に新しい生活になじんでいく圭と友一。

けれども、有里だけは、いつまでたっても、一言も口をきこうとしない。

彼女には、人前で話ができなくなるような、悲しい理由があった・・・。

はじめは、山村留学をいやがっていた子供たちが、友達や村の人々とのふれあいを通して、人の心の痛みや傷を理解し、自分がどう行動していくべきかを学んでいきます。

認知症を患っている春見家の祖祖母とのふれあいが、心を閉ざしていた有里に少しずつ変化をもたらせますが、そのきっかけを作った圭も、弱かった自分に打ち勝つ力を有里から与えられます。

楽しいことばかりではない山村留学が、子供たちをたくましく変えていく様子を丹念に描いた、著者渾身のデビュー作。

さわやかな読後感と、登場人物へのやさしいまなざしが感じられる作品です。

第13回小川未明文学賞受賞作品「夏への帰り道」を改題。