べんり屋、寺岡の春。 文研出版

「べんり屋、寺岡の夏。」から続いてきた人気シリーズ最終巻。

べんり屋寺岡で働くカズ君の受験日が、間近に迫ってきた。

家族ぐるみで応援している寺岡一家だが、そわそわとして、なんとなく落ち着かない。

そんな時、主人公の美舟がひそかに気にしているクラスメイトの男の子、筒井君がお父さんといっしょに寺岡家にやってくる。

依頼は、筒井君が理科室で飼っているカメの池を、自宅の庭に作ってほしいというもの。

筒井君には、凪人君という病気で入院している弟がいるが、その凪人君が一時帰宅するのにあわせて、池に放したカメを見せてあげたいと筒井君は考えていた。

いつもニコニコして、他のクラスメイトの男の子たちとは、どこかちがう雰囲気のある筒井君。

でも、筒井君がカメ好きになったのには、美舟もびっくりする思いがけない理由があった・・・。

これまでの作品同様、寺岡家とそれを取り巻く人々が織り成すユーモアに満ちた会話や行動は、今回も健在。

笑いながら、けれども、何度も涙したくなる「べんり屋」シリーズも、今作がラストとなります。

やがて寺岡家から旅立っていくカズ君や、亜衣ちゃんのおばあちゃんとの悲しい別れ。

そんな中で美舟が、何を思いどう成長していくのかが、緻密なタッチで丁寧に描かれています。