おじいちゃんが孫に語る戦争

著者:田原総一郎 絵:下平けーすけ(講談社)

言わずと知れたジャーナリスト田原総一郎氏が、孫の朗人くんと正人くんに語った太平洋戦争の体験談と戦争に対する考えを1冊にまとめた良書です。

体裁は、児童書の形式をとっていますが、中身は、大人が読んでもたいへん勉強になります。

戦争にいたる過程や、その原因、また、戦後の日本がどのように復興していったかが、わかりやすく説明されていて、現在の日本が世界の中でどのような立場にあるのか、さらには、今後どのように行動していくべきかが、ジャーナリストの鋭い視線で語られています。

昭和の歴史を学術的に記した書物は数多くありますが、これほど理解しやすく、それゆえ読者が深く思索できるものは、そうないと言っていいでしょう。

海軍兵学校に入って戦闘機のパイロットになるのが夢だったという田原氏が、戦争が終わり灯火管制のなくなった明かりのついた家々を見たとき、自分が何かから解放されたような気がしたと語る場面には、後に一流のジャーナリストへとなっていく氏の原点があります。

戦争が、いかに不毛で残酷なものであるか。

家族でいっしょに読みあい、語りあってほしいとのジャーナリストの願いが、文章の端々から感じられてきます。