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美和の里児童文学館では、子供から大人まで楽しめる童話や児童文学を随時掲載していきます。

テーマは、「人」「こころ」「つながり」。

人と人との絆が叫ばれる現代だからこそ必要とされる、文学作品の掲載を目指します。


最新情報


「とうげの旗 第27号」に「ウスユキソウの咲く夏」「夕立あがり」の2作品を掲載しました。


信越放送SBCラジオにおいて、信州児童文学会編「カンガルーハッチのパンチ」(総和社)の掲載作品が朗読されました。

 

日時 令和1年11月30日(土)午後4時30分~午後4時50分

番組 信越放送SBCラジオ「武田徹の言葉はちから~朗読なかま大集合」

朗読 おはなし玉手箱(長野市立川中島小学校ボランティアグループ)

作品 石原きくよ作「ずいとん坊には まけたぜよ」(朗読 下条美代子さん)

   原田康法作「たんぽぽ いっぱい」(朗読 宮本愛子さん)

 たんぽぽいっぱい

 

ある冬の日曜日。タッくんは、お父さんとお母さんの三人でお買いものに出かけました。

デパートのおもちゃ売場で消防車のミニカーを買ってもらって、それから、みんなでお昼ごはんを食べました。

デパートのいちばん上の階にあるレストランの窓からは、タッくんの住んでいる町がとおくまで見わたせます。

朝はいいお天気だったのに、いつのまにか、雨がふっていました。デパートのふもとにある交差点を、いろんな色のかさが行ったり来たりしています。

「わあ、たんぽぽみたい」

タッくんには、かさをもってあるく人たちのようすが、たんぽぽの綿毛のように見えたのです。

「そうだ、タッくんにあたらしいかさを買ってあげなくっちゃ。こわれていたんだよね」

お母さんが、思いだしたように言いました。今までタッくんがつかっていたかさは、古くなって、もう骨がおれてしまっていました。

お昼ごはんがおわると、タッくんは、黄色いウルトラマンのかさを買ってもらいました。デパートを出る時に開いてみると、やっぱりたんぽぽのようです。お父さんとお母さんも、自分のかさをさして、たんぽぽになりました。

みんなでたんぽぽ、うれしいな。タッくんは、ぴょんぴょんととびはねるようにして歩きました。つめたい雨なんか、へっちゃらです。だって、たんぽぽみたいに、ふんわりと空をとべるような気がするんですもの。

すると、本物のたんぽぽの綿毛がひとつ、タッくんのまえをとおりすぎていきました。

「まあ、早いたんぽぽね」

お母さんが言いました。たんぽぽの綿毛は、白くくもった空にとけこむように消えていきましたが、タッくんたちは、なんとなくあたたかくなったような気がしました。

そっとふきはじめた南風。もうじき、春がやってきます。

ダウンロード
[SBCラジオ]言葉はちから朗読なかま大集合(TimeFree)_2019113
MP3 オーディオファイル 27.5 MB