チョコミント 学研

小学六年生の鮎子は、化学メーカーに勤める父親と専業主婦の母親、弟の遥斗、それに犬のコマルと暮らしているふつうの少女。

ところが、ある日、鮎子が帰宅すると、母親が犬のコマルとともに家から姿を消していた。

何かあったのではないかと心配する鮎子と遥斗だったが、なんと、父親のもとには、今夜は帰れないという母親からの電話がかかってきていた。

どういうことなのかと、いぶかしがる鮎子だったが、父親は、話をはぐらかして、真実を伝えようとはしない。

それどころか、すぐに戻ってくると思っていた母親は、一月が過ぎても、二月が過ぎても帰ってくる気配はなかった。

そんな母親に怒りをおぼえながら、鮎子は、残された父親や弟の遙斗とともに、毎日の生活に悪戦苦闘する。

やがて、鮎子は、すべての謎を解くため、尾道にいるという母親に会いに出かけるのだが・・・。

鮎子の姉となるはずだった赤ん坊の存在が、すべての鍵となっていくこの物語には、子供の側から見た世界観だけでなく、大人の側から見た家族のあり様が描かれている。

さらに、もともと活発な性格だった鮎子が、ある出来事をきっかけに内向的な少女に変化していったエピソードが、伏線として張られ、物語を奥行きのあるものに仕上げている。

すべての登場人物に明確な役割が与えられた人物設定や、複雑に絡み合う人間関係を破綻なく描き切った構成など、作者の才能が、いかんなく発揮された第24回さきがけ文学賞受賞作品。