べんり屋、寺岡の秋。 文研出版

「べんり屋、寺岡の夏。」の続編。

さえない画家の父親を反面教師に「まっとうに生きる」ことを目標にしている小学5年生の美舟の新たな物語。

ある日、娘の保育園の運動会に家族として参加してほしいという依頼が、べんり屋寺岡に舞いこんでくる。

母親の里砂さんは、立ち上げたばかりの洋菓子店が忙しくて、運動会に参加できないらしい。

とはいえ、娘のすみれちゃんは、まだ四歳。

知らない人ばかりに囲まれた運動会では、さぞ、心細いにちがいない。

とにかく、かわいいすみれちゃんのために一肌脱ごうと決意する美舟たちだったが、運動会当日の朝、おばあちゃんと従業員のカズ君の姿が、とつぜん消えてしまって・・・。

中盤からは、寺岡家に幽霊騒動も持ち上がって、美舟たちは、インチキくさい霊能者「麗子さま」や、それを信じる「瀬戸の湯のおばさん」にふりまわされていきます。

真実を見きわめる目を持つことが、いかにむずかしいか。

人に流されるのではなく、自分の意思で生きていくことの大切さをさり気なく教えてくれる本作のラストには、子どもだけでなく大人にも共感できる説得力があります。

それでいながら、どこか間の抜けたようなユーモアが、作品を魅力的なものにしています。

小学校中学年以上向き。