小学校がなくなる!

著者:麻生かづこ 絵:大庭賢哉(文研出版)

小学四年生になったばかりの彩は、最初の始業式で、自分たちの通っている学校が、ほかの小学校との統廃合で無くなってしまうことを告げられる。

統廃合までの残された期間は、たったの一年だけ。

来年には、仲のいい友達とも離れ離れになってしまうかもしれないし、学校でのたくさんの思い出もなくなってしまう。

さみしさと悲しみで落ちこんでしまう彩とクラスメイトたちだったが、学校を無くさないでほしいと担任の先生に話してみても、決まってしまったことだからと請け合ってもらえない。

校長先生のところに行って頼んでみても、みんなの気持ちはわかりましたという返事だけで、どうにもならない。

こうなったら、市長さんに会いに行って、直談判するしかないと考える彩たちだったが・・・。

近年、各地で行われている学校の統廃合を題材に、その現実の中で揺れ動く子供たちの心が丹念に描かれています。

はじめは、廃校を嘆いているだけだった子供たちが、自分たちの頭で何をするべきかを考え、行動していく様子は、ほほえましくも力強く、読者に未来への活力を与えてくれます。

また、スマートフォンやパソコンなど、デジタル機器ばかりを利用しようとする現代にあって、子供たちのささやかな抵抗は、実にアナログ的で、どこか、懐かしさを感じさせます。

やがて、彩たちは、自分たちを支えてくれる家族の存在や、広がりを見せていく近隣の人々との交流、統合先の小学校の子供たちとの出会いなどを通して、さまざまなことを学び、少しずつ成長していきます。

けっして、安易なハッピーエンドだけに流されない終わり方が、ストーリーに現実感を与え、作品世界を、地に足のついたものに仕上げています。

小学校中学年向きですが、しっかりした構成と文章力によって、大人が読んでも納得のいく、児童文学の王道とも呼べる珠玉の物語です。