みつきの雪

著者:眞島めいり 絵:牧野千穂(講談社)

満希と行人の、出会いと別れ、そして、未来へとつながる物語。

野見山行人は、小学五年生の桑島満希の住む信州の村にやってきた、同い年の山村留学生。

穏やかな性格で勉強もできる行人は、たちまち新しい学校での生活に溶け込んでいくが、満希は、彼と仲良くなることに警戒感を抱く。

山村留学の受け入れ期間は、基本的に二年間と決まっている。

満希には、四年生の時に山村留学生だった親友から受けた、心の傷があった。

今では、山村留学生を、あくまで「お客さん」と考えることにしている満希。

できるかぎり、行人を避けるようにしていた彼女だったが、ある日の学校からの帰り道、雪で見えなくなった用水路へ落ちそうになった行人を助けたことで、二人の時間が動きはじめる。

作品は、十二の章に区切られていて、小学五年生から高校三年生までの時間を行ったり来たりする。

そのひとつひとつの物語が、少年と少女の淡い時を丁寧に紡ぎあげていて、主人公たちのしぐさや風景が目に浮かぶほどに心地よいシーンを作り出している。

大きな事件があるわけでもなく、家庭に深刻な問題がおこったというような展開もない。

それでいながら、思春期の二人の揺れる心の動きが鮮やかに伝わってきて、読者を魅了する。

途中、満希が裁断機でケガをする場面が出てくるが、あまりにも表現が巧みで、ページを飛ばしたくなるほど痛みが伝わってくる。

もっとも、当の本人は、それほど痛がってはいないのだが、そのケガがひとつのきっかけとなり、行人が将来の進路を決めていくという構成にも現実感があった。

昨今の児童文学界において、これほど清涼感のある作品は希少である。

児童文学ではあるが、これから社会に羽ばたいていこうとする高校生に読んでもらいたい青春小説と言った方が、ふさわしいかもしれない。

独特の感性を持つ、新しいタイプの作家の登場を感じさせる、第21回ちゅうでん児童文学賞大賞受賞作品。