著者:山口理 絵:最上さちこ(偕成社)
小学五年生の田所翔太は、歴史マニアのサッカー少年。
二歳年下の妹、理子は、そんな兄にいつでもくっついていこうとするが、翔太には、それがうっとおしい。
進学塾にも通っている翔太は、息苦しい毎日がいやで、ばあちゃんが話す昭和の時代にあこがれていた。
そんなある日、母親から買い物を頼まれた翔太は、しかたなく理子をつれて出かけるが、その途中で強烈な緑色の光を受け、見知らぬ場所にたどり着く。
なんと、そこは昭和19年、太平洋戦争まっただ中の日本だった。
状況が理解できないまま、特別高等警察につかまりそうになった二人は、相馬栄二郎という翔太と同い年の少年に助けられるが・・・。
爆撃。食糧難。闇市。人買い。
暴力と欲望がひしめく戦時中の過酷な状況が、「貧しいけれど、夢と希望にみちあふれ、みんなが笑顔でくらしている昭和時代」という翔太のあまい認識を打ちくだく。
けれども、この物語は、「だから、平成という平和な現代が、いちばんいいのだ」という安易な結論を主張してはいない。
物語の終盤、まったくちがう道をたどった翔太と栄二郎のその後と、ばあちゃんの口から語られる真実に衝撃が走る。
小学校高学年から中学生向き。