熊谷千世子先生のページ

熊谷千世子先生は、第4回椋鳩十記念伊那谷童話大賞や第6回盲導犬サーブ記念文学賞を受賞された、本格派の児童文学作家です。

15年間の教師生活を経験されている先生の、子どもたちへの視線には、女性ならではの深い愛情が満ちており、主人公をはじめとするひとりひとりのキャラクターが、みずみずしく描かれたその作風は、大人から子どもまで、幅広い読者から支持を得ています。

実際に先生が見聞きされた実体験にもとづいた作品が多いため、ストーリーにあいまいさがなく、すっきりと読むことができます。

人間疎外がさけばれている今日、先生の訴えられている人道主義や反差別主義は、わたしたちの進むべき道しるべとして、大きな役割を担っています。

プロフィール

熊谷千世子

1957年生まれ。

1998年「おにぎりの詩」で第4回椋鳩十記念伊那谷童話大賞。

2002年「月夜の晩のいびつ鬼」でとうげの旗作品賞。

2003年「しあわせのしっぽ」で第6回盲導犬サーブ記念文学賞大賞。

つくしんぼ同人。

信州児童文学会会員。

日本児童文学者協会会員。

日本児童文芸家協会会員。

長野県在住。

つくしんぼの会

「つくしんぼの会」は、熊谷先生が所属する、長野県を中心にした作家の同人です。

わたしの文学における恩師で、元信州児童文学会会長の宮下和男先生が顧問を務めておられます。

同人誌「つくしんぼ」を随時発行。

会に所属する諸先生方の書かれたハイクオリティな作品を、発表し続けています。

第8集には、ブラジルからやってきた日本語がわからない少年フレッドと、「ヨワシ」とあだ名されている気弱な少年、剛との心の交流を見事に描いた、熊谷先生の「またねのチャオ」を掲載。

「クルーの空」とも共通する、言葉や民族の壁を乗り越え、手を取りあうことの重要性をうたった、すばらしい人間賛歌の物語です。

出版物

「クルーの空」(文研出版)

小学5年生の大地のクラスに、ある日、美乃という名の少女が転校してきます。

けれども、美乃は、中国からやってきた帰国子女で、日本語がうまく話せませんでした。

いつもだまったままで、学校の行事にも参加しようとしない美乃に、クラスのみんなから反感が出てきます。

大地も、かたくなな美乃の態度に、つい、いじわるをしてしまうのですが、ある日、彼女が傷ついたカラスの面倒を見ていることを知って、心の中に小さな変化がおこります。

言葉が通じない苦しさや、生まれ故郷を遠く離れたさみしさ。

そして、愛する人を失った悲しみ。

美乃の心の傷をたどっていく過程は、そのまま、他者の気持ちをわかろうとする大地の成長の軌跡となって、読者をいざないます。

生まれた国がちがっても、反目を乗り越えて手をとりあっていく子どもたちの姿に、大人たちが忘れかけていた大切なものを再発見させてくれる、熊谷文学最高の名作です。

「魂をあやつるピアノ」(国土社)

国土社から刊行されている「怪談図書館」シリーズの第8弾。

11人の作家による、短編作品集です。

熊谷先生の作品は、「月夜の影ふみ」。

仕事で帰りが遅くなったパパを、バス停まで迎えにいくわたし。

いっしょにいるのは、ママとおねえちゃん。

パパもいっしょになって、4人で手をつなげば、足もとには、いつだって月明かりでできた影ぼうしが。

けれども、おねえちゃんはトラックにはねられて、今はもういません。

悲しみにくれるパパとママ、そして、わたし。

そんなある夜、玄関のドアの向こうで、フッと人の気配が・・・。

ちょっぴりこわくて悲しい、短編ミステリーの傑作です

「竜神様の銀のしずく」(文研出版)

小学6年生の潤は、看護師をしている母さんと二人暮らし。

学校でうまくいかなかったり、母さんの再婚話があったりと、何かとイライラしている潤は、亡くなった父さんの生まれ故郷への山村留学に行こうと決意します。

けれども、出かけた先の里美村にも気のあわない子どもたちがいたりして、潤は、たちまち不安になってしまいます。

潤には、ひとつの目的がありました。

家の段ボール箱の中で眠っていた、ガラスのような石。

父さんが残したその不思議な石の謎を、潤は、解きたいと考えるのでした。

やがて、石は、学校のすぐとなりにある龍神池と何らかのかかわりを持っていることがわかってくるのですが・・・。

親元を離れて、一年におよぶ山村留学の道を選んだ潤の前には、乗り越えなければならない数々の壁が立ちはだかります。

そんな中、友だちや大人たちのはげましを受けてたくましく成長していく主人公の少年の姿に、大きな感動がわきあがります。

「あの夏の日のとびらを開けて」(文研出版)

中学生の果菜は、合唱コンクールでの事件をきっかけに、登校拒否をおこしてしまいます。

ある日、新聞広告につられて出かけた小さな美術館「たけのこ館」で、果菜は、ひとつ年上の真一という少年と出会います。

つっけんどんなもの言いで果菜を怒らせてばかりの真一ですが、彼の心には、忘れられない深い傷があって・・・。

真一の弟で、脳に障害を持つ翔君や「たけのこ館」の館長さん。

美術大生で竹工芸に熱心なやえさん。

そして、バングラデシュにいる親友の樹里。

さまざまな人たちとの出会いとはげましによって、 果菜は、少しずつ前を向いて歩き出します。

人それぞれに形はちがっても、つらいことや悲しいことがあり、だれもが目に見えない戦いをしているのだ。

そんな著者のメッセージが伝わってくるラストが、読者の心を深い感動でゆさぶります。

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