熊谷千世子先生のページ


熊谷千世子先生は、第4回椋鳩十記念伊那谷童話大賞や第6回盲導犬サーブ記念文学賞を受賞された、信州を代表する児童文学作家です。

長年にわたる教師生活を経験されてきた先生の、子どもたちへの視線には、女性ならではの深い愛情と慈しみが満ちており、主人公をはじめとするひとりひとりのキャラクターの成長が、みずみずしく丁寧に描かれたその作風は、大人から子どもまで、幅広い読者から支持を得ています。

また、奇をてらわない落ち着いた文章と作品作りのための正確な取材が、物語り全体を引きしめ、ストーリーにリアリティをあたえています。

人間疎外がさけばれている今日、先生の訴えられている人道主義や反差別主義は、わたしたちの進むべき道しるべとして、大きな役割を担っています。


プロフィール

熊谷千世子

1957年生まれ。

1998年「おにぎりの詩」で第4回椋鳩十記念伊那谷童話大賞。

2002年「月夜の晩のいびつ鬼」でとうげの旗作品賞。

2003年「しあわせのしっぽ」で第6回盲導犬サーブ記念文学賞大賞。

2017年「風の神送れよ」でとうげの旗児童文学賞。

つくしんぼ同人。

信州児童文学会会員。

日本児童文学者協会会員。

日本児童文芸家協会会員。


とうげの旗

「とうげの旗」は、1971年に信州児童文学会から創刊され、日本で最も長期にわたって発行され続けた児童文学雑誌です。

2012年2月発行の第162号をもって終刊となりましたが、「親子で読みあう雑誌」と銘打ち、多くの少年少女たちに夢と希望を与え続けてきました。

現在は、信州児童文学会の会誌として、児童文学作家たちの作品発表の場となっています。


※「とうげの旗」は、信州児童文学会のホームページで読むことができます。


「風の神 送れよ」

長野県の南、神坂田の大久保地区の伝統行事を丹念に描いている。

長野の二月は、凍りつくような寒さだ。

その寒さの中、念仏をしながら行なう「事念仏」。

これは、太鼓と鉦をたたきながら各家を回り、その家に合わせた口上を述べて、家々に疫をもたらす事の神を集めるものだ。

そして、集めた事の神を村の外に送り出す「事の神送り」。

これら二つを合わせて「事八日行事」と呼ぶ。

重要なのは、こうした行事をすべて子どもたちの力だけで執り行なうという点。

疫病をしずめるために始まった、江戸時代から続く伝統行事で、遊び半分ではとても完遂できない。

最年長者が頭取、その一才下くらいが補佐役になって、年少者をまとめていくのだが・・・。

主人公は、小学六年生の優斗。

頭取である中学一年生の陽を支えて補佐役を務める予定だったが、陽が部活でケガをしたために、引き受けたくない重責が雄斗に降りかかってくる。

途中、小学五年生の女の子、柚月のおじいさんが山で倒れてきた木にはさまれて意識不明の重体になったり、季節はずれの大雨で優斗の父親の工場が、大きな被害を受けてしまったり。

「事八日行事」は、こうした災厄から地域を守る大切なお祭りである。

優斗は、責任の重さに押しつぶされそうになりながら、仲間たちと「事八日行事」にのぞむ。

児童文学としてはもちろんのこと、日本全国で年々失われていく伝統文化のひとつの貴重な記録として読むことができる。

地域の実情や行事そのものの様子も事細かに表現されていて、はじめての読者にも大変わかりやすい。

しかし、そこは児童文学。

子どもたちの成長していく様子には、著者の経験にもとずくたしかな観察眼が反映されていて感動させられる。


つくしんぼの会

「つくしんぼの会」は、熊谷先生が所属する、長野県を中心にした作家の同人です。

元信州児童文学会会長の宮下和男先生が顧問を務めておられます。

同人誌「つくしんぼ」を随時発行し、ハイクオリティな作品を、発表し続けています。

第八集には、ブラジルからやってきた日本語がわからない少年フレッドと、「ヨワシ」とあだ名されている気弱な少年、剛との心の交流を見事に描いた、熊谷先生の「またねのチャオ」を掲載。

「クルーの空」とも共通する、言葉や民族の壁を乗り越え、手を取りあうことの重要性をうたった、すばらしい人間賛歌の物語です。


出版物