熊谷千世子先生のページ


熊谷千世子先生は、第4回椋鳩十記念伊那谷童話大賞や第6回盲導犬サーブ記念文学賞を受賞された、信州を代表する児童文学作家です。

長年にわたる教師生活を経験されてきた先生の、子どもたちへの視線には、女性ならではの深い愛情と慈しみが満ちており、主人公をはじめとするひとりひとりのキャラクターの成長が、みずみずしく丁寧に描かれたその作風は、大人から子どもまで、幅広い読者から支持を得ています。

また、奇をてらわない落ち着いた文章と作品作りのための正確な取材が、物語り全体を引きしめ、ストーリーにリアリティをあたえています。

人間疎外がさけばれている今日、先生の訴えられている人道主義や反差別主義は、わたしたちの進むべき道しるべとして、大きな役割を担っています。


最新情報

熊谷千世子先生の最新刊、

「しだれ桜のゴロスケ」(文研出版)

が、単行本で発売されました!

定価1,300円(税抜)

土砂くずれで母親を亡くし、父親とも別れて暮らさなければならなくなった姉弟の心の再生の物語。

緻密な取材に基づいたストーリーが、読者をいざないます。

お近くの書店、または、ネットショッピングにてお求めください。


祝!!

「とうげの旗 第15号」に掲載された熊谷千世子先生の

「風の神 送れよ」

「第6回とうげの旗児童文学賞」

に選ばれました!

どうぞ、ご覧になってみてください!

 (ダウンロードに若干の時間がかかります)

熊谷千世子先生の受賞の言葉が、「とうげの旗 第19号」に掲載されています。

(ダウンロードに若干の時間がかかります)


プロフィール

熊谷千世子

1957年生まれ。

1998年「おにぎりの詩」で第4回椋鳩十記念伊那谷童話大賞。

2002年「月夜の晩のいびつ鬼」でとうげの旗作品賞。

2003年「しあわせのしっぽ」で第6回盲導犬サーブ記念文学賞大賞。

つくしんぼ同人。

信州児童文学会会員。

日本児童文学者協会会員。

日本児童文芸家協会会員。

長野県在住。


とうげの旗

「とうげの旗」は、1971年に信州児童文学会から創刊され、日本で最も長期にわたって発行され続けた児童文学雑誌です。

2012年2月発行の第162号をもって終刊となりましたが、「親子で読みあう雑誌」と銘打ち、多くの少年少女たちに夢と希望を与え続けてきました。

現在は、信州児童文学会の会誌として、児童文学作家たちの作品発表の場となっています。


※「とうげの旗」は、信州児童文学会のホームページで読むことができます。


「風の神 送れよ」

長野県の南、神坂田の大久保地区の伝統行事を丹念に描いている。

長野の二月は、凍りつくような寒さだ。

その寒さの中、念仏をしながら行なう「事念仏」。

これは、太鼓と鉦をたたきながら各家を回り、その家に合わせた口上を述べて、家々に疫をもたらす事の神を集めるものだ。

そして、集めた事の神を村の外に送り出す「事の神送り」。

これら二つを合わせて「事八日行事」と呼ぶ。

重要なのは、こうした行事をすべて子どもたちの力だけで執り行なうという点。

疫病をしずめるために始まった、江戸時代から続く伝統行事で、遊び半分ではとても完遂できない。

最年長者が頭取、その一才下くらいが補佐役になって、年少者をまとめていくのだが・・・。

主人公は、小学六年生の優斗。

頭取である中学一年生の陽を支えて補佐役を務める予定だったが、陽が部活でケガをしたために、引き受けたくない重責が雄斗に降りかかってくる。

途中、小学五年生の女の子、柚月のおじいさんが山で倒れてきた木にはさまれて意識不明の重体になったり、季節はずれの大雨で優斗の父親の工場が、大きな被害を受けてしまったり。

「事八日行事」は、こうした災厄から地域を守る大切なお祭りである。

優斗は、責任の重さに押しつぶされそうになりながら、仲間たちと「事八日行事」にのぞむ。

児童文学としてはもちろんのこと、日本全国で年々失われていく伝統文化のひとつの貴重な記録として読むことができる。

地域の実情や行事そのものの様子も事細かに表現されていて、はじめての読者にも大変わかりやすい。

しかし、そこは児童文学。

子どもたちの成長していく様子には、著者の経験にもとずくたしかな観察眼が反映されていて感動させられる。


つくしんぼの会

「つくしんぼの会」は、熊谷先生が所属する、長野県を中心にした作家の同人です。

元信州児童文学会会長の宮下和男先生が顧問を務めておられます。

同人誌「つくしんぼ」を随時発行し、ハイクオリティな作品を、発表し続けています。

第8集には、ブラジルからやってきた日本語がわからない少年フレッドと、「ヨワシ」とあだ名されている気弱な少年、剛との心の交流を見事に描いた、熊谷先生の「またねのチャオ」を掲載。

「クルーの空」とも共通する、言葉や民族の壁を乗り越え、手を取りあうことの重要性をうたった、すばらしい人間賛歌の物語です。


出版物

「しだれ桜のゴロスケ」(文研出版)

村下李乃は、小学五年生の女の子。

今は、一年生で弟の由宇とともに長野県の伊奈地方にある母さんの実家で暮らしている。

二人の母さんは、三歳になった由宇を自動車に乗せたまま、長雨と地震によっておこった土砂くずれに巻き込まれ命を落とした。

それからは、医薬品の営業で仕事に忙しい父さんとも、離れ離れの生活をしなければならなくなってしまった二人。

由宇は、雨が降っただけでひどくおびえ、押入れの中に作った段ボールの部屋に閉じこもってしまう。

そんな心の傷ついた弟を、同じく心の傷ついた李乃は、ただ見守ってあげることしかできない。

母さんの実家の母屋の裏には、樹齢百年を超えるしだれ桜がある。

亡くなった母さんが嫁入りするまでの遠い昔、そこには、母さんが大切にしていた、ゴロスケという名前のフクロウの家族が住んでいた。

オスがメスよりも小さい、ノミの夫婦のゴロスケたち。

ところが、とっくに死んでしまっているはずのゴロスケたちが、李乃と由宇の前に姿を現わす。

あれは、もしかしたら母さんが大好きだったゴロスケたちの子孫?

準絶滅危惧種に指定されているフクロウの家族を天敵から守ろうと、李乃と由宇は、行動を開始するのだが・・・。

母さんが愛したフクロウのヒナの成長を見守り続ける中で、苦難を乗り越え成長していく姉弟の姿が、時に痛々しく時にほほえましく、そして、時に力強く生きることの意味を読者に教えてくれる。

長年、教師として子供たちを見つめ続けてきた著者による、熊谷文学待望の新刊。


「クルーの空」(文研出版)

小学5年生の大地のクラスに、ある日、美乃という名の少女が転校してきます。

けれども、美乃は、中国からやってきた帰国子女で、日本語がうまく話せませんでした。

いつもだまったままで、学校の行事にも参加しようとしない美乃に、クラスのみんなから反感が出てきます。

大地も、かたくなな美乃の態度に、つい、いじわるをしてしまうのですが、ある日、彼女が傷ついたカラスの面倒を見ていることを知って、心の中に小さな変化がおこります。

言葉が通じない苦しさや、生まれ故郷を遠く離れたさみしさ。

そして、愛する人を失った悲しみ。

美乃の心の傷をたどっていく過程は、そのまま、他者の気持ちをわかろうとする大地の成長の軌跡となって、読者をいざないます。

生まれた国がちがっても、反目を乗り越えて手をとりあっていく子どもたちの姿に、大人たちが忘れかけていた大切なものを再発見させてくれる、熊谷文学最高の名作です。


「魂をあやつるピアノ」(国土社)

国土社から刊行されている「怪談図書館」シリーズの第8弾。

11人の作家による、短編作品集です。

熊谷先生の作品は、「月夜の影ふみ」。

仕事で帰りが遅くなったパパを、バス停まで迎えにいくわたし。

いっしょにいるのは、ママとおねえちゃん。

パパもいっしょになって、4人で手をつなげば、足もとには、いつだって月明かりでできた影ぼうしが。

けれども、おねえちゃんはトラックにはねられて、今はもういません。

悲しみにくれるパパとママ、そして、わたし。

そんなある夜、玄関のドアの向こうで、フッと人の気配が・・・。

ちょっぴりこわくて悲しい、短編ミステリーの傑作です


「竜神様の銀のしずく」(文研出版)

小学6年生の潤は、看護師をしている母さんと二人暮らし。

学校でうまくいかなかったり、母さんの再婚話があったりと、何かとイライラしている潤は、亡くなった父さんの生まれ故郷への山村留学に行こうと決意します。

けれども、出かけた先の里美村にも気のあわない子どもたちがいたりして、潤は、たちまち不安になってしまいます。

潤には、ひとつの目的がありました。

家の段ボール箱の中で眠っていた、ガラスのような石。

父さんが残したその不思議な石の謎を、潤は、解きたいと考えるのでした。

やがて、石は、学校のすぐとなりにある龍神池と何らかのかかわりを持っていることがわかってくるのですが・・・。

親元を離れて、一年におよぶ山村留学の道を選んだ潤の前には、乗り越えなければならない数々の壁が立ちはだかります。

そんな中、友だちや大人たちのはげましを受けてたくましく成長していく主人公の少年の姿に、大きな感動がわきあがります。


「あの夏の日のとびらを開けて」(文研出版)

中学生の果菜は、合唱コンクールでの事件をきっかけに、登校拒否をおこしてしまいます。

ある日、新聞広告につられて出かけた小さな美術館「たけのこ館」で、果菜は、ひとつ年上の真一という少年と出会います。

つっけんどんなもの言いで果菜を怒らせてばかりの真一ですが、彼の心には、忘れられない深い傷があって・・・。

真一の弟で、脳に障害を持つ翔君や「たけのこ館」の館長さん。

美術大生で竹工芸に熱心なやえさん。

そして、バングラデシュにいる親友の樹里。

さまざまな人たちとの出会いとはげましによって、 果菜は、少しずつ前を向いて歩き出します。

人それぞれに形はちがっても、つらいことや悲しいことがあり、だれもが目に見えない戦いをしているのだ。

そんな著者のメッセージが伝わってくるラストが、読者の心を深い感動でゆさぶります。