イラスト/猫尾めい
中学二年生の桜木純は、運動神経だけが取りえの明るく活発な少女だ。
同じクラスの少年、足立翔とは家が近所の幼なじみだが、最近、翔は元気がない。
理由は、入院している母親の病気だった。
ある日、ふとしたきっかけから、三つの山を越えた先にある朝霧の園という公園を、二人は徒歩で目指すことになる。
幼いころは、いっしょに近くの山登りをして遊んだ純と翔だったが、それも今は昔の話。
「中学生にもなって、何で今ごろ?」といぶかる翔を、ほとんど強引に誘う純。
純には、翔を朝霧の園へ連れていかなければならない理由があった・・・。
小学六年生の青山晴香のクラスに、杉村理恵という少女が転校してきた。
友達を作ろうとせず、いつもひとりでいる理恵は、晴香にとって、ちょっと近寄りがたい存在だ。
ある日のこと、晴香の住む街に大きな台風がやってくる。
学校の体育館に家族と避難した晴香だったが、そこで彼女は、自分と同じように軒先から空を見上げている理恵と出会う・・・。
多感な少女と少女の心が触れ合う、嵐の夜の物語。
高校一年生の雅美は、新米のボランティア部員。
学校の近くにある老人福祉施設「あけぼの苑」にボランティアで出かける時は、いつも、損な役回りをさせられてしまう。
「あけぼの苑」には、大橋さんという認知症を患った男性老人がいた。
知らない人を見ると、「あんた、山口さん?」と問いかける大橋さん。
雅美は、戸惑いながらも、しだいに大橋さんの本当の姿に気づいていく。
中学3年生の成美は、家の近くにある墓地の公園で、ひとりの小さな男の子と出会う。
自分で自分のことを「ヒロくん」と呼ぶその男の子は、成美を見かけるたびに、「いっしょに遊んでよ」と声をかけてくる。
いつも、ひとりで公園にいるヒロくんを不思議に思う成美。
彼の笑顔には、四年前に死んでしまった成美の弟の面影が漂っていた・・・。
中学生の夕子には、依子という名の友達がいる。
無口で、ほとんど感情を表に出さない依子は、クラスの中でも異色の存在だ。
ある日、クラスで、依子が高校へ進学しないらしいといううわさが広がる。
うわさは、本当だろうか?
二人を引き寄せるようにふりはじめた夕立。
ゆれる夕子の心の中で、何かが変わっていく。