著者:長谷川まりる 絵:おさつ(くもん出版)
高校一年生のヒロこと広瀬結愛は、ある時、重大な決心をする。
それは、小学校から一緒だった杉森くんを殺すこと。
このことを五歳離れた大学生のミトさんに電話で打ち明けると、「いまのうちに、やりのこしたことやっとけよ。後悔しないように」とアドバイスされる。
「止めないの?」と尋ねると「ヒロは止めてほしいの?」とミトさん。
それから、裁判所で証言するために、なぜ、杉森くんを殺さないといけなかったのかまとめておくように言われる。
さすがミトさん。
こんなに大好きなのに、ヒロは、ミトさんと結婚できないことを知っている。
だって、ミトさんは、ある日、突然ヒロのお兄さんになってしまったから。
物語は、両親の再婚でミトさんと兄妹になってしまったヒロの独白形式で進んでいく。
なぜ、ヒロは、杉森君を殺さなければならないのか?
そもそも、杉森くんとは、ヒロにとってどういう存在なのか?
読み進めていくうちに、少しずつ謎解きされていく展開が読者の興味をそそる。
しかし、この作品は、いわゆるティーンエイジャー向けの推理小説とは異なる。
なぜなら、謎そのものは、物語の前半でおよそ解けてしまっているからだ。
それでも、最後まで読ませる力を持っているのは、主人公の内面を克明に描いた著者の力量によるところが大きい。
推理小説のようで推理小説でないこの作品の魅力は、なんと言っても、杉森くんを殺すに至ったヒロの心境の変化を非常に繊細に書きつづった点にある。
「杉森くんを殺すには」というショッキングな題名からは想像がつきにくい、ひとりの多感な少女の内面の闇と悲しみを解放していくラストに感動を覚える。
小学校高学年から中学生以上向き。