べんり屋、寺岡の冬。 文研出版

「べんり屋、寺岡の夏。」「べんり屋、寺岡の秋。」に続く「べんり屋」シリーズ第三弾。

お母さんが、お父さんとケンカして家を飛び出してしまった!

とつぜん、寺岡家に持ち上がった「べんり屋」の危機。

でも、不安になって相談した友だちの真帆は、なんだか美舟に冷たい態度をとったりする。

わけがわからない美舟。

クリスマスプレゼントにトイプードルがほしかった美舟は、お客さんから預かった雑種犬「ハナゾウ」をしかたなく世話しながら、なんだか落ち着かない。

ところが、お母さんが帰ってこないまま迎えた終業式の日、真帆が離婚して離れて暮らしているお父さんに会いに行くと言い出す。

「そんなことして、だいじょうぶ?」と心配する美舟だが・・・。

美舟のまわりには、いつもさわぎを巻きおこす人がいっぱい。

でも、そんな人たちと泣いたり怒ったり笑ったりしながら、美舟は、わかっているつもりでいた身近な人たちの本当の心に気づいていきます。

べんり屋に依頼にくるお客さんたちのエピソードが、物語に味わいを持たせ、読者に深く語りかけてくる構成が、作品に生命を吹き込み、高い完成度をもたらせています。

児童文学ですが、大人が読んでも納得のハイクオリティな一書です。

後半に登場する「そう君」のかわいらしさも秀逸です。